【全訳・解説付き】ジョブズのスピーチは名言の宝庫!スタンフォードでの伝説のスピーチを美しい和訳で読む~PART1

最近知ったのですが、高校によってはスティーブ・ジョブズスタンフォード大学でのスピーチを英語の授業でやるらしいですね。

で、たぶんググってもらえれば色々と和訳したものは出てくるのですが…正直なところ、「これだと本当の魅力は伝わらないなぁ…」ってものばかり。

なんか、すごいぎこちない和訳の文章ばっかりですよね笑

 魅力、本当に分かってる?

それに、学校の先生でも、この魅力を伝えきれている人がどれだけいるのでしょうか。

ぶっちゃけ、このスピーチってジョブズにまつわるいろんな背景を知らないと本当の意味って全然分かんないんですよ。

”Stay hangry, stay foolish”という最後の言葉だけ独り歩きしてます。

まあ、テスト対策とか宿題を出すために調べるのなら十分っちゃ十分だし、英語の勉強にはなるんだけどね。


Steve Jobs' 2005 Stanford Commencement Address

僕、本当にジョブズのスピーチは大好きで、もう何十回も繰り返しきいてるんですよ。

何か大きな決断をするとき、今やってることが正しいのかどうか迷っているとき、必ずこのスピーチを聴くようにしています。

 

本当に、ちょっと英語が分かる人ならその単語の選び方とかが繊細で絶妙なのが分かるし、

ティージョブズの伝記を読んだりして彼の半生を知ってる人なら下手な映画を見るよりよっぽど心が揺さぶられるわけです。

ちなみに、彼は仏教の「禅」を若い時からやってるので、実はその禅の考え方が詰まったスピーチでもあります。

だから、なるべく美しい和訳を付けてあげたいと思ったし、高校生にも分かるように彼の人生のストーリーとか背景をきちんと説明してあげたいと思ったのです。

 

というわけで、ところどころ補足を入れながら、ジョブズのスピーチの全訳をしていきたいと思います。

 

ジョブズのスピーチの3つのポイント

ジョブズのスピーチは、彼の人生における3つの体験にまつわる話(+最後にはなむけの言葉)からなってます。

  1. 「点はつながる」…大学を中退して何となく受けた授業が後にかけがえのないものになったという話
  2. 「愛」と「喪失」…自分で作った会社をクビになって絶望してからの話
  3. 「死」…ガンで死にかけた時に改めて知った、人生において本当に大切なものの話

普通、卒業式の祝辞ってお偉いさんが説教臭い話をするイメージがありますけど、このスピーチが感動的なのはジョブズが等身大の自分の人生をさらけ出して心を込めてはなしてるからなんですよね。

そして、このスピーチが行われたアメリカではジョブズその人についてある程度みんな知ってたので、細かい部分はジョブズも省略して話してますけど、

ぶっちゃけ日本の高校生(そして先生方もかな?)にはちょっと理解しきれない部分があるので、そういうところを補足しながら書いていきます。

 

ちょっと長いので、この記事では最初の「点はつながる」という話の部分だけ。続きは、次の記事で書いていこうと思います。

それでは前置きが長くなりましたが、スピーチの全訳+解説を心を込めて書いていきたいと思います。なるべく、小難しい単語は使わずに、意訳も入れて。

(ただし文法的な解説は一切なしで。きりがないので。)

 

全訳+解説…「点はつながる」

I am honored to be with you today at your commencement from one of the finest universities in the world. Truth be told, I never graduated from college, and this is the closest I've ever gotten to a college graduation. (laughing) Today, I wanna tell you three stories from my life. That's it. No big deal. Just three stories.

私は今日、世界でもっとも素晴らしい大学の一つであるこの大学の卒業式で、あなたたちと同席できてとても光栄です。正直なところ、私は大学を卒業したことがないし、今回私は今までの中で一番大学の卒業式に間近で参加しているわけです。(ここでみんな爆笑)今日は、私の人生の中から3つほどお話ししたいと思います。それだけです。大したことはありません。たった3つの話です。

 

The first story is about connecting the dots. I dropped out of Reed College after the first 6 months, but then stayed around as a drop-in for another 18 months or so before I really quit. So why did I drop out?

最初のお話は、「点はつながる」というものです。私は、リード大学を最初の6か月で中退したのですが、本当に大学を去るまで、潜りの学生としてそこから18か月居残ったわけです。では何で私は中退してしまったのでしょうか?

  • 他の和訳だと、「点と点をつなぐ」とか、「点をつなげていく」という訳し方をしてるわけですが、ジョブズの言いたいこととしては「点はつながるんだから自分のやってることを信じろ」っていうことなんです。(ここから先を参照)
    だから、あえてこういう風に受け身的な訳し方をしてます。

 

It started before I was born. My biological mother was a young, unwed college graduate student, and she decided to put me up for adoption. She felt very strongly that I should be adopted by college graduates, so everything was all set for me to be adopted at birth by a lawyer and his wife. Except that when I popped out they decided at the last minute that they really wanted a girl.

それを説明するために、私の生い立ちから話していきましょう。私の生みの母は当時まだ若く未婚の大学院生で、私を養子に出すことにしたのです。母は、私が大学をきちんと出た人たちのところに養子に行かせるべきだと強く感じたので、私が生まれた時には弁護士とその妻のところに養子にいくようにと全てが用意されていたのです。ただ、私が生まれたときに最後の最後になって彼らは女の子が本当はほしかったんだと言い出したのです。

  • この事情としては、お母さんの父親が結婚に反対したのでしょうがなく養子に出されたというわけです。相手がシリアからの移民だったからというのが原因だと考えられます。まあ偏見ですよね。いずれにしろ、ジョブズはこの件で父親から捨てられたと感じていて生涯で会おうともしなかったそうです。(実は偶然会ったことがあるのですが、父親だとは気づいてなかったみたい。)

 

So my parents, who were on a waiting list, got a call in the middle of the night asking: "We have an unexpected baby boy; do you want him?" They said: "Of course." My biological mother later found out that my mother had never graduated from college and that my father had never graduated from high school. She refused to sign the final adoption papers. She only relented a few months later when my parents promised that I would go to college. This was the start in my life.

そこで養子縁組の予約待ちリストにいた私の育ての両親が、夜中にこんな電話を受け取ることになったわけです。「予想外のことが起きて一人、赤ちゃんの男の子が余っているのですがお引き取りしたいですか?」そして両親は、「もちろん。」と返したわけです。ところが、後に生みの母が、育ての母親が高卒で父親の方に至っては中卒であることを知ってしまったので、彼女は最終合意の署名をするのを拒みました。数か月たって私の育ての両親たちが私を大学に行かせると約束したので、ようやく落ち着いて取引成立しました。これが私の人生の始まりだったのです。

  • ジョブズは幼い時から自分が養子であることは知ってましたし、引き取ってくれた両親にはとても感謝していたそうです。特に中卒ながら優れたエンジニアであった父親からものづくりに対する姿勢を色々と教わっていたのがAppleにも生きているわけです。

 

And 17 years later I did go to college. But I naively chose a college that was almost as expensive as Stanford, and all of my working-class parents' savings were being spent on my college tuition. After six months, I couldn't see the value in it. I had no idea what I wanted to do with my life and no idea how college was going to help me figure it out. And here I was spending all of the money my parents had saved their entire life.

そして、17年後に私は確かに大学に行きました。しかし、私は深く考えもせずにこのスタンフォード大学と同じくらい学費の高い大学を選んでしまい、労働者階級の私の親の貯金はほぼほぼすべて学費に使われようとしていたのです。6か月たって、もはや私はそこに何も価値を見出せなかったのです。私が人生で何をしたいのかも、大学がそれを見つけるためにどう役に立つのかも分かりませんでした。そしてまさにそのとき、私の両親が全人生をかけて貯金したすべてのお金を浪費しようとしていたのです。

  • 生まれの母との約束もあって大学にいくことはほぼ決まりみたいな感じになってたジョブズですが、正直もともと大学にはそんなに行きたくなかったので、その反抗心から(?)学費の高いリード大学を選んでしまったというわけです。
  • ちなみにスタンフォードの学費は年間で500万円近く。日本の大学の5倍以上。平均的なサラリーマンだと1年分の年収にあたります。リード大学はスタンフォードと違って奨学金もなかったので彼の両親はえげつない額を払ってたわけです。
  • そんなわけで、ジョブズは両親への罪悪感もかなりあったのです。

 

So I decided to drop out and trust that it would all work out OK. It was pretty scary at the time, but looking back it was one of the best decisions I ever made. The minute I dropped out I could stop taking the required classes that didn't interest me, and begin dropping in on the ones that looked far more interesting.

そこで私は大学を中退して、これで全てうまくいくだろうと信じることにしたのです。当時はすごく怖かったのですが、振り返ってみると今までの人生の中で一番良かった決断でした。私は中退してすぐ、興味のない必修授業を取るのをやめてそれよりももっとずっと面白そうだった授業に潜り込むことにしたのです。

  • 日本でもそうですが、アメリカでも会社に就職するならやっぱり大学を中退したとなると大変です。もしかしたら一生を棒に振るかもしれない決断だったわけです。
  • ちなみに、ジョブズは必修以外の授業や大学の雰囲気(アートや宗教などに満ちてる)自体は大好きでした。実際、ジョブズは大学を去ってからインドに禅の修行に行ってるくらいですし。ただ、興味のない必修授業を強制的に受けるのがいやだっただけ。

 

It wasn't all romantic. I didn't have a dorm room, so I slept on the floor in friends' rooms. I returned coke bottles for the 5¢ deposits to buy food with, and I would walk the 7 miles across town every Sunday night to get one good meal a week at the Hare Krishna temple. I loved it. And much of what I stumbled into by following my curiosity and intuition turned out to be priceless later on. Let me give you one example:

何もかもが理想的だったわけではありません。私は寮の部屋がなかったので、友人の部屋の床で寝ていました。また、飲んだ後のコーラのボトルを回収して5セントを集めて食費を稼いだり、毎週日曜日の夜には7マイル離れたハレ・クリシュナ寺院に歩いて行っておいしい食事にありついたりしました。あれは本当に美味しかった。そして、私が興味や直観に惹かれて巡り合ったものの多くは、後にかけがえのないものになったのです。その一つの例について、説明させてください。

  • これまで何度も言ってきたように、ジョブズはいろんな宗教に興味をもってました。クリシュナ(ヒンドゥー教の一派)もその一つ。(このスピーチではあまり触れてませんが)そういったことも含めて人格形成に役立ったとジョブズは他のインタビューで言ってます。
  • これは余談ですが、LSD(要はクスリ)をやってたのもこのころ。これに関しては生涯で最高の体験だったとまで言ってます。…まあマネはしない方がいいかもしれませんが、彼のインスピレーションのもとになったのかもしれません。

 

Reed College at that time offered perhaps the best calligraphy instruction in the country. Throughout the campus every poster, every label on every drawer, was beautifully hand calligraphed. Because I had dropped out and didn't have to take the normal classes, I decided to take a calligraphy class to learn how to do this.

当時のリード大学は、アメリカ国内でおそらく最高のカリグラフィ(西洋の書道)の授業がありました。大学のキャンパス中のポスター、全ての引き出しの張り紙の文字は美しく手書きで描かれていました。私は中退していて一般のクラスには出席する必要がなかったので、書き方を学ぶためにカリグラフィのクラスに出ることにしました。

 

 I learned about serif and san serif typefaces, about varying the amount of space between different letter combinations, about what makes great typography great. It was beautiful, historical, artistically subtle in a way that science can't capture, and I found it fascinating.

私は、セリフ体とサンセリフ体について、アルファベットの組み合わせと文字の間隔の関係について、凄いと言われている活版印刷の何が凄いのかについて学びました。その美しさや歴史の重み、科学では捉えられない芸術的な繊細さに私は魅了されたのです。

  • ジョブズは常々、「私は芸術と科学の交差点に立っていたい」という風に言ってましたが、この大学時代の経験というのがとても生きているわけです。だから、iPhoneiPadMacはあんなに見た目もそれ以外もシンプルで美しいし、何より使いやすいわけです。
  • セリフ体(例:明朝体)とかサンセリフ体(例:ゴシック体)というのは、授業でパワーポイントを作るときとかに意識してみるといいですよ。だいぶ見やすさが違ってくるはず。

 

 None of this had even a hope of any practical application in my life. But ten years later, when we were designing the first Macintosh computer, it all came back to me. And we designed it all into the Mac. It was the first computer with beautiful typography. If I had never dropped in on that single course in college, the Mac would have never had multiple typefaces or proportionally spaced fonts. And since Windows just copied the Mac, it's likely that no personal computer would have them. (applausing)

こういったことは、私の人生において実用的に役立つ見込みは当時はありませんでした。しかし10年後に、私たちが最初のマッキントッシュ・コンピューターの構想を練っているときに、そのときの記憶が蘇ってきたのです。そしてそのすべてをMacに搭載して、世界で初めて美しい活字を備えたコンピューターになったのです。もし私がたまたまこの授業一つに潜り込まかったら、Macで複数の書体やバランスの取れた文字間隔で文字が表示されることはなかったわけです。そしてWindousはただMacを真似しただけなので、どのパソコンもそんなことはできなかったでしょう。(大歓声)

  • 1984年に発売された当時、マッキントッシュ(通称:Mac)はiPhone並みのインパクトがある商品でした。今みたいにパッと見で直観的にどうやって操作すればいいかが分かるパソコンはこれが初めてだったのです。
  • もともとパソコンは普通の人たちが身近に使うものじゃなくて、専門家たちが使う難しそうな機械の一つだったのです。だからこそ、一般人に馴染んでもらうために美しい活字が大切だったわけですね。
  • 実際、1984年にビル・ゲイツMicrosoftの社長)はすぐにMacを真似したWindousを作って、Macよりも売れてしまうわけです。そんな恨み?もあってジョブズビルゲイツMicrosoftをことあるごとにけなしたりもしてます。

 

If I had never dropped out, I would have never dropped in on this calligraphy class, and personal computers might not have the wonderful typography that they do. Of course it was impossible to connect the dots looking forward when I was in college. But it was very, very clear looking backwards ten years later.

もし私が中退しなかったら、カリグラフィのクラスに潜ることもなかったしパソコンはそこまで美しい活字を備えることにならなかったかもしれません。もちろん、私が大学にいた時はそんな先々のことを考えて、1つ1つの出来事の点を繋げることなんてできませんでした。しかし、10年後に振り返ってみると、とてもとてもはっきりとその点が繋がっていたのです。

  • あなたが今高校でやってることも、「将来これは役に立つからやってます!」って言えることって少ないと思います。
  • でも、それでも打算で「とりあえず何か役に立ちそうなこと」をやるのではなく、興味や直観でやりたいと思ったことなら、今一生懸命やればいつかそれが実を結ぶ時が来るからそれをやりなさいってことですね。

 

Again, you can't connect the dots looking forward; you can only connect them looking backwards. So you have to trust that the dots will somehow connect in your future. You have to trust in something — your gut, destiny, life, karma, whatever. Because believing the dots will connect down the road, it gives you confidence to follow your heart; even it leads you off the well-worn path. And that will make all the difference.

いいですか?未来を見て点と点を繋げることはできません。点は過去を振り返ったときに初めて繋がるものなのです。だから、その点がどうにかして将来繋がると信じることが大切です。あなたの根性、運命、人生、因縁、何でもいいんです。何かを信じなければいけません。やがて「点と点は繋がる」と信じることで、たとえそれが他の人達とは違う生き方をすることになるとしても自分の心に素直に生きる勇気が湧いてくるのです。そしてそれこそが、あなたの真価を発揮させてくれるのです。

  • 高校生や大学生になると、「そんなことやって何の役に立つの?」って周りから言われることも多くなります。世の中の大人のほとんどは打算で生きてますから。そして、どうしても筋の通った反論ができないこともあると思います。
  • でも、あとから振り返ってみると、やっぱり好きなこと、直観で正しいと思ったことをやった方が良かったことが多いですね、僕も。
  • 英語では、”Make a difference”という言葉が一般的にあります。他人と何か違いがないと価値がないよってこと。だから、他の人に合わせて自分の気持ちを押し殺しちゃダメだよってことですね。

 

⇒「愛」と「喪失」の話に続く

 

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